昭和四十七年大洪水の記憶

能代市中川原 藤田 吉蔵 (七十五歳)


 連日の雨、加えて豪雨、水害に備え大事な品物は二階へ、家具等は床上一米のところへ棚を作り上げ、対策が完了。市の指示により、第三小学校へ避難した。災害当日米代川がどんどん増水しているとの情報に中川原橋まで行ったら、多数の人が集まっており、正午過ぎ、災害を知らせるサイレンが鳴った。堤防が決壊したとのこと。自分にとって忘れられない光景を見ることになった。桧山川上流一帯から濁流が津波のように押し寄せ一軒の住宅も流され駅裏の旧トロッコ線上手に衝突。バラバラになり、あっという間に中川原全体が水浸しになった。この災害に人命の被害がなかったことは幸いでした。
 次の日、水が少なくなって、自宅へ腰までの水の中をどうやら歩き、途中道路が盛り上がっており、アスファルト舗装が水圧で浮き上がっていた。ようやくの事で自宅に入ると吃驚今迄どんなに水害にあっても、床上十センチぐらいが最高だったのが、今回は、二米近く家財道具等は泥水の中洪水の恐ろしさが未だに思い出されます。各世帯共皆同じ状況で、後片づけに何日もかかり道路には大変なゴミの山ができ市の方で整理をされました。
 この大洪水を契機にこと三十年間に米代川の全河川が殆ど堤防が完備され、喜ばしいことでありますが、今後、又、どんな大雨豪雨があるか分かりません。その対策として当地区では、堤防布地全部に土盛りをし、今より頑丈で丈夫な堤防にと現在側帯工事が進められ、本当に感謝しておりますが、更に安心安全のため一米ぐらい堤防の嵩上げができないものかと思っており、又、市のご理解により側帯の土盛り箇所に各団体個人等の善意により、百四十本程の桜の苗木が植樹されました。
 今後、工事されるところにも桜を植樹され、桜堤事業も完了したとき、大事に大切に育て、将来は桜の名所となるよう願っております。
 現在、中川原自治会館に建てられた、三十年前の大洪水の最高水位 を記録した表示柱を見るたびに、これ以上の洪水にならないよう、そして堤防の上を越えるようなことのないよう願っております。



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